禁断症 第四話「禁断症」 (04/09/11)


 俺達は別れた。
 喫煙の欲求は、三大欲求のうちのどれに入るだろう?どれにも入らないのだろうか?そんなことばかり考えるようになった。手が震えだした訳でもない。だが、我慢ができなかったことは事実だ。毒を体内に取り入れること、生きるためには絶対に必要 でない。しかし、俺にとっては4つ目の大きな欲求だったようだ。
 物を喰わないと死ぬ。眠らないと多分死ぬ。では、SEXはどうなのだろうか?やらないと死ぬのか?生きるために必要なのだろうか?恋愛という欲求はあるのだろうか?

 俺達は別れた。
 どうしても一人でタバコを吸う時間が欲しくて、彼女のいる時間は公園に行くことをやめた。他の場所、誰にも気を遣わないでタバコを出来る場所、自分の部屋にいる時間が増えるようになった。だが、喫煙の欲求とは別の、性欲、恋愛に関する欲求の部分が、確かに存在して、頻度は少なくなったが、公園に、彼女に会いに行った。でも、それも限界だったのかも知れない。

 俺達は別れた。
 ある日を境に彼女は公園に現れなくなった。最後に話したのは、嫌いな給食のメニューとか、そんなのだった気がする。理由は分からない。彼女の方が気が変わったのかも知れない。好きな男でも出来たか?俺がタバコのことを考えていたからか?何か大きな力が働いたのか?だとしたら、あまり、のんびりは出来ない。
 何にしろ、彼女は公園に現れなくなった。

 一人になって、自分のことを考えるようになった。
 俺は彼女のことが好きだったのだろうか?恋愛のレベルにおいて。彼女との年齢差。どう考えてもそこに行き着くことになる。このご時世、いや、法律、社会においても認められることはない恋愛。そう言えば、何か美しいものとも考えられるが、結局の所は間違えれば犯罪だ。美しくともなんともない。

 一人になって、自分のことを考えるようになった。
 俺にとって恋愛とはなんなのか?恋愛が性欲の延長線上に、もしくは、性欲の一つの形だとしたら、俺は毎日恋愛していることになる。しかし、彼女からは、他の女との肉体的な繋がりとは違う何かを感じていた。それも恋愛の一つの要素なのだろうか?
 肉体的な繋がり、SEXは恋愛の一つの形であり、結果であり、行為でしかない。別に恋をしていなくても、それなりの金を用意すれば、叶うことだし、それで金を稼ぐことだって出来る。
 考えてみれば当然なことなのだが、そんなことを考えるようになった。思えば、そんなことは、考えずに仕事をしていた。それが、ある意味、常識であり、考えるまでもない事だと分かっているからこそ、考えるのをやめていた。

 一人になって、自分のことを考えるようになった。
 彼女に関する、自分の心の部分は、自分でも分からないことだらけだ。しかし、肉体に関することでは分かり易い変化があった。それは、下衆な話だが、勃起だ。
 俺自身、身体のそういった反応は、外部からの視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚にうったえる刺激によって起こるものだと思っていた。簡単な例はポルノ雑誌だ。性に目覚めてから、ずっとそうだと信じていた。だから、恋愛や愛情の結果を知った頃から、それらは、ある種、快楽であり行為でしかないと、どこか批判していた。しかし、彼女とあってから、彼女と話している時は、自然と身体がそうなっている時があった。最初、自分でも疑ったのを覚えている。

 一人になって、自分のことを考えるようになった。
 恋愛というものが、性欲に基づいているなら、もしくはその逆でも、その身体の反応は正しいと思えるようになった。別に彼女をどうにかしようと思った訳ではない。誓って言える。だが、心が彼女を求めていたことは確かで、だからこそ、それが身体に反映されたのだ。そう考えると、勃起というのも、そうそう、破廉恥?なものではない。何にしろ、俺の心は彼女を求めていたようだ。

 俺は今、恋を失い、生を感じられないが、性に溢れる世界にいる。
 金がないと生きていけない。働くことは必要だ。欲求を果たしながら、金を稼いでる。思えば、良い仕事だ。しかし、自分の身体のことが一つ分かると、それは、やはり仕事でしかなく、作業だと強く感じるようになった。彼女から、貰った気持ちは沸いてこない。それが仕事というものかも知れない。いっそのこと、別の業界に移ろうか。芸名はどんなのだろうか?

 俺は今、恋を失い、生を感じられないが、性に溢れる世界にいる。
 時々、ふと彼女のことを思い出す。それは、たまに仕事中であるから、不真面目な社員だなと自分でも思う。女の方はそれに気付かないのだろうかと不思議に思うこともある。気付かれた所で、どうという訳でもない。女は俺の身体 を欲している。

 俺は今、恋を失い、生を感じられないが、性に溢れる世界にいる。
 家で一人でいる時、タバコを吸いながら彼女のことを考える。彼女は今どうしているだろうか?彼女は俺のことを覚えているだろうか?子どもは人の区別を顔よりも髪型や服装ですると聞いた。知覚がまだ発達の段階にあるからだ。あれから髪を切った。街であっても、すぐには気付かないかもしれない。しかし、街で会うこと自体がない。同じ街に住んでいたとしたら、偶然にも会いそうなものだが、それも起こらない。ましかしたら、引越すことになったのかも知れない。

 未来のことを考える。
 彼女を失って、恋を失ったが、今の俺にそれが大きな影響を与えていない。それは、性欲を満たし続けることで、代替されているのだろう。しかし、何か変化はあったと思う。変わっていないのは、まだ、タバコを吸い続けていることである。彼女を失ったのは、こいつのせいでもあるのだが、欲求のレベルで平行しているから、やめる訳にもいかない。それに、俺には、まだこいつが必要だ。

 未来のことを考える。
 彼女と再会することはあるのだろうか?その時は、タバコを吸っているだろうか?やめているだろうか?彼女の方が吸っているだろうか?俺のことを覚えているだろうか?お互いの歳は?身長は?結婚…?

 未来のことを考える。
 俺は、いつまで彼女のことを覚えている、求めることが出来るだろうか…?何回もこの答えを通り過ぎる。もう何回目か覚えていない。
 適当に頭を馬鹿にしながら、答えのない迷宮を楽しんでいると、灰皿にいつも山が出来る。買置きも切れたらしい。空気といえば、いつスプリンクラーが作動してもおかしくない。最も、そんな上等なものはついていない。

 俺達は別れた。そして一人になって、自分のことを考えるようになった。俺は今、恋を失い、生を感じられないが、性に溢れる世界にいる。そこで、未来のことを考える。そのためには、相棒が必要だ。時に目を覚めさしてくれて、暇潰しに付き合ってくれる。俺を馬鹿にもしてくれる。 良い相棒だ。

 霞のかかる部屋を出て、カートン売りをしてくれるタバコ屋に向かう。仕事にはまだ6時間以上ある。久しぶりに寄り道でもしようか?そらを見上げると、意外にも天気が良く、薄い雲が日差しを和らげていた。
 

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